山形県の最深部ともいえる朝日連峰の主峰、大朝日岳に日帰りで行ってきました。コースタイムが長く、山頂近くの山小屋に泊まるのが一般的ですが、実際には日帰りの人も多いコースです。
 今回は一番距離が短い「古寺鉱泉登山口」から入ります。

いつもの通り前日の車中泊

 古寺鉱泉は山形県大江町から入ります。ちなみに大江町で一番大きなJR駅は「左沢駅」です。「あてらざわ」と読みます。時々全国版の「読めない漢字」に出てきますね。
 大江町の中心から車を走らせ、そこそこの山道を抜けて古寺鉱泉まで。途中の山道は狭く、しかも道路の両側が落ちている(山側は側溝が切られ、谷側も路肩が怪しい)場所が多いので、特に夜の移動は注意が必要です。
 私は夕方5時くらいの到着だったので大丈夫でした。

古寺登山口駐車場は、かなり拡張しています。
新しい建物が
登山センターになるのね。

 古寺鉱泉の駐車場は、最近大きな工事を行なっています。立派な登山センターと広い駐車場を整備してる真っ最中。来シーズンには完成します。一方、登山道を10分ほど歩いた所にある旅館は、今シーズンで終わりとか。来シーズンはどうなるんだろう。

 駐車場に着いた時、ちょうど年配の4人組が降りてきたところ。「すごく疲れました。」という言葉とともに去って行きました。やはり日帰りは大変なのか。どうしよう、山小屋に泊まろうか、迷うところです。
 今回は、自分の能力を超えるかもしれない長距離なので、山小屋泊にも対応できる準備をして登ります。山小屋は避難小屋で、食材とシュラフを持っていく必要があり、リュックの重量が増えることは避けたいのですが、途中でへたばって泊まる準備がないのも悲惨なので、ここは頑張るしかありません。

午前5時、登山開始

 100台は楽勝であろう広い駐車場で車中泊したのは6台(7人)。朝早い出発なのでみなさん日帰りの予定です。自分だけが「遅くなったら泊まれるように装備を持って上がる」というビビリ屋さん。でもいいんです。まだまだ初心者で自分の能力もわかっているつもりですから。

 昨日買ってあった菓子パン2個を500ミリパックのコーヒー牛乳で流し込んで、5時に出発。シュラフ、3日分の食料、バーナーも入っているのでリュックはパンパン。水なしで7キロの荷物は、自分にとっては「とても重い」カテゴリーになります。

登山口
すぐ古寺鉱泉旅館。今年でおしまいだって。

 歩き始めてほんの5分少々で古寺鉱泉旅館に到着。ここから本格的な山道になります。歩くペースはほぼコースタイム程度。途中で休憩すると、その分だけコースタイムに加算されるスピードです。「コースタイム」なのですから、これが普通であろうと思うのですが、いつもどんどん抜かれていきます。逆に人を抜くことは皆無に近く、コースタイム通りの人はごくごく少数なのかもしれません。
 山は人と競うものではないというのも十分理解しています。でも、なんだか自分が情けない気持ちにもなっちゃいます。
 こんな他愛もない自尊心を克服するのが、自分の登山の命題なのかもしれません。はは。

最初は森林の中を歩く。

 このルートには3ヶ所の水場があり、最初の水場まで2時間ということなので、実は水なしでスタートしました。いえ、リュックには「紅茶(微糖)1リットル」と「コーラ1リットル」が開封しないまま入っています。いざとなったらこれを飲めばいいやと考えて、1.5リットルの水入れと500ミリのペットボトルは空の状態です。おまけに朝早いし涼しいから大丈夫だろうという判断です。
 この判断は、まあ正しいといえば正しかったのですが、さすがに2時間水なしで歩き続けたのは失敗だったかも。途中喉が乾いてきたのに、我慢しちゃいました。

 6:35 一服清水に到着。水はしっかり出ています。助かった。ここで少し休憩。グビグビ水を飲み、空のペットボトルにも満たし、リフレッシュ。ああ生き返った。

一服清水

 再び歩き始め、10分ほどで「日暮沢分岐」を通り、古寺山への登りが始まります。ここの登りが自分には急斜面。なるべく上を見ないようにしてひたすら登ります。途中、「三沢清水」で水を汲んで一休み。この水はほんとにチョロチョロで、コップに満たすのに30秒もかかる量。でも、この先の水場を考えると、しっかり飲んで補充していきます。そんなことをしてる間に、若いカップルが追い越していきました。

左上に見えるのが古寺山。今からあそこまで行くのだ。
ふつうの藪。斜面は急です。
三沢清水
三沢清水の水量は少ないです。
山道が拓けてきた。
古寺山到着。ここがほぼ中間地点。小朝日(左)と大朝日(右)が見える。

8:10 古寺山に到着。ここにきてようやく目的地が見えてきます。手前に小朝日岳、そしてその右後方に大朝日岳。遠いなあ。ない丈夫かな、自分。
(ここで、微糖紅茶の封を切り、飲み始める。かなり元気がでた。)
 古寺山からは一旦下がって小朝日岳への登り返し。これが山登りだというのは十分承知してますが、まだ素直に受け入れられない自分がいます。「ジップラインとかないのか。」と思ったりします。(でも高所恐怖症。)
 でも、そんなのないのでしっかり自分の足で下り、小朝日岳へ。ここには迂回ルートがあるのですが、迷わず(いや、かなり迷って)小朝日岳ヘ向かいます。自分の性格上、疲れ果てた帰りに登る気にならないでしょう。登るなら今でしょ。

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小朝日岳は大朝日岳よりも厳しい

小朝日岳へのアタック開始!

 小朝日岳は、そこそこ急な斜面を登ります。それは登る前から見ればわかっていたこと。いつも通り「あまり上を見ない作戦」で進みます。(ちゃんと景色見ろよこらっ!)そして9時に小朝日岳到着。うん、かなりの達成感。
 ここで、自分へのご褒美に微糖紅茶をがぶ飲み。うまい!

小朝日岳制覇!

 しかし、下りに入って驚いた。登りよりも急な崖みたいな道を延々と下ります。いくら下っても迂回路の合流地点が現れません。小朝日岳は表と裏ではまったく表情が違います。ここは要注意です。
 体感的には登り返しの倍くらい下ったところでようやく迂回路と合流。これ、帰りに登るのだったら確実に泣きが入ったところです。早めに登って良かった。

なんじゃこの下りは!
小朝日岳って、反対側は崖なのね。

予定より早く着き、日帰りを決断

(心で)泣きながら急登を下り、大朝日岳に向けて最後の登り返し。ここらあたりから、すでに山頂に到達して下りてきた人とすれ違います。(どんだけ速いんですか!)登山口でほぼ同時にスタートした若いお姉ちゃんも「大丈夫でした!」と笑顔で下りて行きました。(自尊心がやや崩れます。)
 でも、避難小屋が大きく見えてくると気持ちも高ぶります。とにかく登って来たんですから、自分を褒めてあげましょう。
 避難小屋に行く前に、最後の水場「銀玉水」でがぶ飲み。そして1.5リットルパックも満タンにして最後の登り。

大朝日岳と、寄り付きにある小屋も小さく見えてきた。
銀玉水
県警ヘリがホバリングしてる。下手に手を振ると勘違いされそうで怖い。
わーい。もうすぐ。
避難小屋。中は立派です。

 11時、避難小屋到着。避難小屋の管理人さんは若い女性でした。こちらの避難小屋は確か大江町の山岳会が運営してたはず。彼女は昨日登って来て4泊して下りるということ。こうやって仲間が交代で管理していくというのも、一人に負担がかからず良いシステムですね。
 「泊まろうかどうしようか迷ってます。」と管理人さんに声をかけ、一休み。「ゆっくり考えてください。今日は空いてますから。」という言葉に態度を保留してまずは大朝日岳の山頂へ。避難小屋から往復30分くらいなのでリュックを預けて水だけ持って上がります。山頂は若干雲がかかっているものの、時々ぱあっと視界が開け、満足できる眺めでした。(雨男の自分的にはこれで十分!)
 避難小屋に戻って11時半。どう考えても明るいうちに戻れる時間なので、宿泊をやめて下山することにします。
 小屋の前でまずは昼食。いつもと同じコンビニの「梅干しおにぎり」2個です。高温による腐敗防止を考えると、他の選択肢が思い浮かびません。いつも同じで飽きるだろうと思われますが、食へのこだわりはなく、腹が満たされればOkです。山ではこんな自分が有難い。

大朝日岳山頂です。
山頂からの景色

 せっかく持って来た1リットルのコーラは不要になったため管理人さんにプレゼント。お礼に味噌汁を作っていただきました。(おにぎりには味噌汁だな。)ご飯を食べながら管理人さんと「どこの山はいいですよ。」とか「次は飯豊ですね。」とか山の話をしながら過ごします。とても気さくで素敵な人でした。今度来るときはゆっくり登って、泊まるしか選択肢がないようにしましょう。

 12時過ぎに下山開始。途中の水場で喉を潤しながらゆっくりゆっくり戻ります。もちろん小朝日岳はパスして迂回路を選択。結局4時間半で古寺駐車場に戻りました。

大朝日岳について

こんなのもいたよ。

 とにかく深いところにあり、一番近い登山口からでも6時間のコースになります。長い道のりですが、どのコースも適当に水場があるので、その点は恵まれている山でもあります。大朝日まで来ると、360度どちらを見てもけっこうな山塊で、「おお、かなり奥まで来たぞ。」と実感できます。
 避難小屋はいくつかありますが、あくまでも避難小屋なのでシュラフと食べ物を持参しなければなりません。登山口周辺には商店も自販機もありませんので、大江町の中心街で全てを揃えておきましょう。
 大朝日小屋は1500円の協力金が必要で、このお金は山小屋と登山道の維持管理に使われます。管理人さんの話では「百名山を目標にする人で、ここが最後になる人多いようです。」ということ。そうですよね。辺鄙な場所ですから。
 少々遠いし、登山口から山頂までの道のりも長い山ですが、「日本の山ってこうだよね。」と思わせる山塊が広がります。何度も足を運ぶファンがいるのもうなづけます。

5:00 古寺登山口
6:35 一服清水
6:50 日暮沢分岐
7:35 三沢清水
8:00 古寺山
9:00 小朝日岳
11:00 大朝日避難小屋
11:15 大朝日岳
11:30〜12:00 大朝日小屋で昼食
16:30 古寺登山口

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